【二胡駒】駒はどう選べばよいか?
ご無沙汰しております。
本日は、前回の「【二胡駒】音色調整における駒の重要性」に続き、駒の選び方の概要についてまとめたいと思います。
※本記事はこれまでの経験を踏まえた「私見」となります。
※技術の継続研鑽により、記載内容に修正を加えていくことがあります(修正個所は明記)。
さて、どの駒であれば、よい音が鳴るか?
結論から申しますと、二胡との相性が重要であるため、取り付けて試奏してみるのが一番良い、というのが実情です。
ただし、こういうと手間も時間もお金もかかり、身も蓋もありません。駒の仕様と、「こうしたい!」との間には、根拠に基づくおおまかな傾向がありますので、今回はそこを書いていきます。みなさまの駒選定の一助になれば、幸いです。
駒選びで、まず最初に認識していただきたいこと。2点あります。
1.「高価な駒=音色がよい」ではありません。
私の演奏の方の師匠「趙国良」先生も、多数の駒コレクションをお持ちですし、しかも先日、音色がよいといって見せていただいた駒は、短く切った竹の破片に布テープが巻きつけてある、なんか10円もしない感じのものでした・・・が、その時の二胡の音色は、高音まで恐ろしく抜けがよかった記憶があります。
2.「どの二胡にも、どの季節にも万能に対応する駒」はありません。
楽器自体に個性があり、季節等の影響でコンディションが変化しやすいのが二胡です。また、二胡では千斤の位置も人によって異なるため、同じ駒を友達の二胡につけてもしっくりこない・・・こういうことは普通にあります。
では、本題です。
【1】材質の選び方とその根拠
駒の形状が同じと仮定すると、駒の材質(比重、硬さ)の違いは、主に音量や音色の違いとして現れます。
これは、駒の重さは振動の減衰率に影響し(重いと振動が伝わりにくい)、硬さは振動の伝達速度に影響する(硬いと振動が伝わる速度が大きくなる)からです。これは、絶対的な物理の法則です。
□□□ 比重が小さく(軽く)柔らかい ← → 比重が大きく(重く)硬い
音の大きさ : 大-------小
ノイズの出やすさ: 出やすい-------出にくい
音色 : 明るい音-------硬い音
音の立ち上がり : 遅くぼやけた感じ -------早くしまった感じ
また、木材は構造が複雑であるが故、比重や硬さが似ていても、樹種の違いが振動の伝搬特性の違いとして現れ、音色・・・いわゆる「倍音」の構成に影響します。
中国製の一般的な材質の駒を、比重順にざっと並べますと、以下のようになります。
個人的には、バランスがとれた標準的なものは、紅木駒あたりだと認識しています。駒選びが初めての方は、まずはこのあたりを中心に選んでみて、それからいろいろと駒さがし・音色探しをしてみるとよいと思います。
比重順に並べた駒(中国製の一般的なもの) ※全部同じ形でなくてすみません
【2】高さの選び方とその根拠
駒の材質と基本形状が同じと仮定すると、駒の背の高さの違いは主に音量の違い、材料の特色がどれくらい音色に出てくるか、として現れます。
□□□ 駒の背が低い ← → 駒の背が高い
音の大きさ : 大-------小
材料の特徴 : 材質の特徴が音色にでにくい-------材質の特徴が音色にでやすい
音量の大小の変化の要因は、高さが増した分の駒の重量増によるものです。
極端な例で考えるとわかりやすいですが、たとえば高さ10mmの駒と、高さ10cmの駒を二胡に取り付けるイメージをしてみましょう。高さ10cmの駒だと重く大きく、振動がうまく蛇皮に伝わらないですよね。
重量が増すと、振動伝達時の損失が大きくなり、音量は小さくなります。
ここで注意です。
周囲でたまに耳にするのが、「駒を高くすると弦の張力が増すので、音量が大きくなる」という誤解です。
理由は以下のとおりです。
まず、弦の張力が大きくなると、音量が増す・・・これは間違いではありません。
駒を低いものから高いものに交換した時、弦は引っ張られるので、そのままでは当然弦の張力は増し、音量は大きくなります。
しかし音程も高くなることから、弦を緩めてピッチを合わせますよね。その段階で、弦の張力はもとの状態に戻ります。
つまり、張力に変化はないため、音量変化はない(超厳密にいえばコサイン誤差分の張力増はあるが)ということです。
駒を高くすることで、音量が増すという誤解は、バイオリンの世界でもよくある話のようでして、
専門書※にもやはり類似の記載があります。
※「弦楽器のしくみとメンテナンス」p.121、佐々木朗、音楽之友社
以下、余談ですが、
二胡の場合、幸いにも千斤の位置をある程度自由に調整できます。
弦の張力を強くして音量を大きくするためには、千斤を上げる(駒からの距離を長くする)か、
直径が太めの弦(材質が同じ場合は太い方が張力は大きくなる)を使用する方法があります。
ただし、千斤の位置を上げる場合、若く乾燥が十分でない材の二胡の場合は棹がおじきしてくるかもしれません。奏者の手の大きさとの関係もあって、音程は重要です。また、楽器として一番鳴りの良い位置というのもあります。
ご自身の好みや、あるいは先生に相談しながら、ベストな位置を探してみてくださいね。
次回以降、
【3】形状の選び方とその根拠
◆高﨑駒
等々、アップして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。