二胡は東洋人の音楽の道具(手段)である【著名二胡演奏家 宋飛】

大変興味深い記事を入手しましたので、翻訳してみました!
二胡皇后として知られる二胡演奏家 宋飛氏のインタビュー資料です。

超一流の演奏家が、現代の二胡についてどう考えているのか、とても勉強になります。

※翻訳に際し、言葉を追記したり、あいまいな解釈が含まれる点がありますので、あくまでご参考としてご覧ください。

 

【出典】

 

 

◆二胡は中国の伝統楽器のひとつ。建国以来、どんな改革がありましたか。また、作曲や演奏に、どのように良い影響がありましたか。

 数年前、中古市場で数本の古い二胡を購入したことがあります。これらをみると、形状が小さめで、丸い筒の高胡や、小さい六角形の二胡がありました。作りが粗末で、弦はシルクです。現在、私たちが使用している二胡と比較すると、大きな違いがあります。

 現在の二胡は、筒の形状がほとんど六角形で、他には前方八角後方円形のものがあり、以前のものより大きくなっています。

 弦の仕様については、いくつかの個性が比較的強い曲目以外、ほとんどの演奏はスチール弦を使用しますが、弦の材料と製造方法は多種多様で、銀やクロム、ステンレスもあり、曲目によって使い分けることもあります。

 二胡の棹の断面は円形や楕円形があり、使用する材料も多種多様。紫檀、烏木、紅木、花梨などがあり、様々な種類から選ぶことができます。

 弦軸の様式にも様々な種類があり、木軸、銅軸(機械軸)の2種類があり、銅軸には、引き込み式と巻き上げ式があります。木軸の場合は、微調整器具を取り付けて、調弦を微調整することもあります。

 二胡の規格も様々で、二泉映月専用のものがあり、棹が長め、弦が太めです。それに長城用の専用二胡と弦もあります。

 このように、二胡の性能、構造、材料などの面では、数十年以来大きく改善されています。1本の二胡の寿命はおおいに延長され、演奏の適用性も広くなり、二胡という楽器は、ただの民間楽器から舞台楽器へと地位が高められました。

 今は、独奏だけでなく、合奏、伴奏、協奏も可能です。特に、スチール弦を使用して以来、二胡の音程の安定性がおおいに改善し、他の楽器との合奏がやりやすくなりました。

 私は、日本、韓国に演奏に行ったときに、かつてはこの2つの国の民族楽団と一緒に演奏して、二胡の協奏曲を演奏して、大きな成功を収めました。

 

 

◆長期の演奏活動の中、現代の二胡の質はあなたの要求に達しましたか。

 私の演奏活動では、勉強や仕事の環境変化によって、二胡に対しての要求が変わります。

 15歳のとき、天津音楽学院付属中学校で勉強し、主に北地方で演奏しました。使用するのは北京式二胡で、とてもよいものと思っていました。1985年、北京で開催された二胡コンクールに参加して2等賞を獲得し、その賞品が1本の蘇州民族楽器第一工場が生産した二胡でした。当時は、未使用のまま保管していました。多くの人は、私の賞品を買い取りしたり、交換したいと願っていましたが、それはしませんでした。

 1991年、中国音楽学院を卒業し、中央民族楽団に入団し、ソリストに就任した以降、演奏活動が頻繁になりました。演奏の活動範囲も広くなり、国内では南から北まで、世界ではヨーロッパやアメリカまでになりました。

 緯度の違いから、気温、湿度が異なる様々な環境で仕事をしました。また、地域により、お客様の異なるニーズにも応えるために、違う風格、流派の曲目も演奏しなければなりませんでした。私自身が多様な環境に慣れる必要があるのと同様に、楽器にも、あらゆる環境に適応する性能が必要でした。

 北地方の気候は乾燥しており、南地方の気候は蒸し暑い。かつて1回、香港に演奏に行ったのですが、舞台の本番直前、蛇皮が緩んでしまい、音が出なくなりました。当時はとても焦り、しかたなく二胡を借りて演奏をしました。それから、この教訓を踏まえ、毎回演奏に出かけるときは4~5本の北京、蘇州、上海製の二胡をそれぞれ持っていき、演奏直前に試奏して、最良のものを選ぶようにしていました。しかし、こんなたくさんの二胡を毎回持って出るのは、とても不便でした。

 一回、偶然ですが、私は1985年にもらった賞品-蘇州二胡(上記記載の二胡)を引っ張り出しました。この二胡は10数年の間未使用でしたが、弾いてみると音量と音色がとてもよく、そのまま舞台で通用するものでした。この二胡は10数年経っても性能が劣化しておらず、質の安定性がとてもよいと思いました。

 1998年、もう1本の蘇州民族楽器第一工場の高級二胡を手に入れました。賞品のものと比較して10数年後の新製品ですが、質はさらに大きく改善され、音色はさらに甘く美しくなっており、自分は蘇州二胡がもっと好きになり手放せなくなりました。そして、この二胡を各地の演奏に行くときに、試しに持っていき、数年の間演奏活動をしました。この二胡は確実に様々な試練を受けましたが、北地方でも南地方でも、しっかりと仕事をしてくれました。

 それから、わたしは蘇州二胡には特別な感情を持ち、重要な演奏では蘇州二胡を使用します。

 私が、蘇州二胡の音色が好きな理由は、北地方の二胡と南地方の二胡の中間にあり、音色が広く厚く、音質が繊細でなめらか。我々プロの演奏家は、二胡を選ぶ基準は音色、音質、音量、手で持った馴染み感、各把位での音量のバランスが良く、音色が統一であることです。

 1本のよい二胡は、音量が大きいだけでなく、深みのある味わいがあって、二胡の性格に魅力があります。つまり、奏者の感情を意のままに表現できるかどうか。そして、二胡の細かい作りこみが、ちょうどよい具合にできているかどうか。例えば、棹の握った感じや幅、重量なども、とても重要です。

 これらの細かいところに満足できれば、演奏時に思い通りに演奏できる、使いやすい二胡という判断になります。これらの条件について、蘇州二胡は基本的にプロの要求に達していると思います。

 

 

◆二胡の未来の発展、傾向に対しての考えは?

 二胡は中国民族音楽の宝箱の中の1つの珍品です。いま、わが国では代表的な弦楽器になっています。高等音楽学院では、専門の教程があって、作曲家や演奏家により、たくさんの古典的な二胡独奏曲、協奏曲が作り上げられました。これらは、民族音楽領域の中で、二胡を特に重要な位置まで昇格させました。

 二胡は、この100年において、とても大きな発展をしました。阿炳時代には民間楽器として街中のひとつの楽器でしたが、舞台楽器となり世界に広がったことは、歴史的な飛躍です。今後二胡は、もっと大きな発展があるでしょう。とある専門家の予言では、二胡は世界に通用する楽器になれると。

 二胡は、2本の弦だからこそ、表現力がとても豊富である。2弦の不安定性があるからこそ、その中身は奥深くなり、演奏家のこれほど細かく丁寧な演奏手法を養いました。聴く側にとっても、実に不思議な芸術的な享受をもたらしました。

 未来の二胡の発展については、二胡の伝統性を保つべきです。伝統の音質を保ったうえで、改善し高める。例えば、二胡は木軸を使用すべき。あるいは、木軸と微調整器具を組み合わせる。銅軸は調弦が狂いやすいです。

 代替皮の問題について。少し前は北京の代替皮鑑定会に参加したことがあります。ある程度の成果はあると思います。でも、真皮に対してはやはり差が大きく、もっと深く研究してほしい。蛇皮の膜の組織構造から、バイオニクスを踏まえて、深く研究してほしいと願うところです。

 現在、業界では、3弦、4弦の二胡を研究する人もいますが、弦の増加はただ音域を広くし、ハーモニクスを多くするだけで、音質に関して大きな改善がありません。

 もうひとつの考え方について。二胡とバイオリンを比較する人がいて、二胡の演奏技術はバイオリンの性能に達することを期待されます。私の考えは、これらは違うものです。東洋と欧米の場所の違い、文化や環境の違いにより、美意識が違います。二胡は東洋人の音楽楽器です。演奏時には、抽象的で、独特な個性の音楽で、他の楽器には代えられないものです。

 二胡で欧米曲を演奏するのは、演奏の中のほんの一部分だけであり、主流ではありません。私たちの主流は、伝的なものを研究して広めることです(伝統的な文化が無視されたら、どんどん失われていきます)。中国の伝統芸術を熟練するまでやるのが、いちばん美しく、よいと思います。

 

 

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