【二胡駒】高﨑駒
次回に予定しておりました「【3】形状の選び方とその根拠」につきましては、イラストがあったほうがわかりやすいため(製作中)、先に「高﨑駒」について、以下の2構成でご紹介させて頂きます。
◆高﨑駒の特徴
◆高﨑駒の製作背景
◆高﨑駒の特徴
高﨑駒の製作・最終調整で念頭においていること、それは
「二胡の本質的な音を引き出せること」
「内弦と外弦、ポジションにかかわらず音質や音量にバランスがとれていること」
「念頭」と書きましたのは、駒は本来、二胡1本1本に対して調整が必要なものであるとの認識があるためです。
この「念頭」により近い駒を製作・ご提供するため、手持ちの二胡、周囲の二胡友の支えも借りまして、二胡の特徴やコンディション、駒の材質や形状等の複数条件に基づくケーススタディにより、現在の駒の仕様設定に至っております(おそらく今後も進化します)。
「万能な駒」というものは存在しませんが、より完成度の高い駒をご提供するべく、一定の独自仕様に従い、最終調整まで完了したものにショップロゴの焼印を付け、「高﨑駒」としてご提供しております。
◆標準形状
・古典的な形状である「前後左右シンメトリー」
・柔らかい音を追求した「円形底」
演奏において重要となるのは、弓の弾く、止める を音として素直に出してくれる性能だと私は考えます。よって、基本形状はシンプルであること。無駄なものは要りません。
また、使用材ごとに密度が異なるため、材ごとに適した重量バランスとなるよう、穴の大きさ補正、サイド削り込みにより調整しています。
底面も、ケーススタディにより導き出した、最適な面積となるよう定めています。
◆標準高さ
・標準は約8mm
・二胡の弾きこみ状態により、やや高めの約9mm
経験値に基づき、音色と音量の両立点として、駒の高さは8mmを標準としています。
やや音量を抑えてでも、木材の音色の違いを強めに出したい方、弾き込んだ二胡で、蛇皮が柔らかい(蛇革の中央がややへこむ)場合は、やや高めの9mmがよいです。
◆材質
・中国産の駒にはない材
・輸入材のうち、駒の良質材料として実績のある材
材料は、上記のものを独自ルート(頑張って、あるいは人脈により)で入手しております。新規の材で駒を製作する場合は、試作の上、テストに十分に時間をかけます。この段階で駒に適さないと判断する材もいくつもあり、これらは勉強品として私の引き出しへと入り、のちのちの復習材料として活かされます。
≪現在製作中の材料たち≫
イタヤカエデ柱材、御蔵島産本つげ、黒柿(黒色、白色、二色)、鉄刀木(タガヤサン)、花梨瘤、肥松(古材黒松、赤松)、黒松根株、なつめ、神代けやき
老紅木、古材老紅木、アフリカ小葉紫檀、黒檀、縞黒檀
※大部分が在庫切れで製作が追い付いておらず、申し訳ありません。製作完了次第、随時ネットショップにて掲載させていただきます。

高﨑駒
◆高﨑駒の製作背景
ここでは、2013年に「二胡之友」の取材を受けた際の私の手記(記事ではない)を転載させて頂きます。このときの背景・思いが、現在の原動力となっております。
たいした内容ではございませんが、ご興味のあられる方はお暇なときにご一読いただければ幸いです。
◆二胡の調整において、おもしろいところは?
一言でいうと、「とても気むずかしい楽器である」ことが、とてもおもしろいと思います。二胡は、ごく限られたパーツで構成されていますが、どれひとつとっても音色に直結しており、重要な役割があります。たった1つのパーツの調子が悪いだけでお気に召さない音色になったり、少し手を入れてあげることで、格段に音色がよくなったりします。生の蛇皮を使用しているため、気温や湿度による音色への影響は、他の生楽器と比較して大きいと思います。
こうした、二胡をとりまくあらゆるコンディションを踏まえつつ、自分が好きな音色になるよう思考し、自らの手で調整を行う・・・しかも大がかりではなく、ちょっとした工夫で。それが可能なのが、二胡なのだと思います。
基礎知識の習得と、調整を繰り返し行うことによる考察ができれば、自分自身で、ある程度は好みの音色に近づけていくことが可能です。自分で音づくりができるなんて、素敵だと思いませんか。
◆なぜ駒づくりを始めたのですか?
音色の本質は、二胡本体で決まっています。それ以外で音色を調整できるものとしては、千斤、弦、駒、弓、松脂、コントロールマットがあると思います。このなかで、音色の変化が一番わかりやすいのは駒だと思います。なぜなら、音を作り出す振動体である蛇皮に、直に接しているパーツですから。私は様々な材料、形状の駒を、その時々のコンディションに応じて調整・交換を行ってきました。そこでぶつかった壁が、「試してみたい材料や形状の駒がない」ことでした。だったら、自分で作ってしまえ!ということで、駒づくりを始めました。
◆調整において、難しい所、大事だと思う所はありますか?
私は理系出身で、音や振動の伝搬など物理学的な基礎については、概ね理解できます。しかし、その概念に基づいて調整を試みても、簡単には思い通りにならない。逆に、とりあえず試しにやってみたことが、以外と良い結果を生み出したりすることもあります。
現状では、試行錯誤を繰り返してみないとわからないという、あいまいな表現になりますが、ここで得られた結果に基づいて問題点を見極め、それを解決するための課題を整理し、法則・規則性としてまとめ上げる試みを進めています。ただし、この法則・規則性も、二胡本体が別のものになると通用しなくなります。この普遍性のなさが、難しい所だと思います。よって、まずは1本1本の二胡本体の特性や状態を見極めること。これが、調整においてとても大事なことだと思います。
◆駒作りで求めるものは?
あくまで好みの音色は個人によって異なりますが、私は駒づくりにおいて、「その二胡の本質的な音を出せること」、「内弦と外弦、ポジションにかかわらず音質や音量にバランスがとれていること」を求めています。
◆現在、どのようなもので駒を作成していますか?
通常見かける材料の駒は、調整のためのベース(材料)として一通り揃えています。老紅木、紫檀、黒檀、松節、楓(油煎含む)などがあります。この他、種類が不明の様々な木材、竹、日本に古くからある黒柿や屋久杉なども試しています。あと、異例のものとして、陶器でも制作しています。
◆今後の取組方針は?
これからも、より多くの種類の材料(木材に限らず)と形状で駒を制作し、試していきます。自分が作った駒で、お気に入りの音色が出せたなら、こんな素敵なことはありません。
あと、二胡本体の修理技術の習得です。自分の二胡も、何度かトラブルに遭遇したことがあり、気温や湿度の変化が大きい日本では、どうしても避けられないようです。修理技術を身につけて、自分の分身である二胡を末永く使っていきたいものです。また、割れたり折れたり曲がったり・・・と、二胡仲間で困っている人がいるとき、私が正しい技術に基づいて修理できれば・・・と常々考えています。本場の二胡工房へ、修行に行きたいと願っています。
